生きているだけでいい。   大丈夫。

大好きだった父との時間をこれからもっと取り戻すはずだったのに、突然訪れた別れ。いつか、私の人生もなんとかなったよ、と空に向かって乾杯したい。その日まで続けたいブログです。

大島紬

10年以上前、学生時代一番仲のよかった友だちに母のことを話して、それからその友だちと会うことがなくなった。

母が買ってくれた着物のことで不満を話した私に対して、彼女はとても怒った。

なんでそんなこと言うの。
せっかく買ってくれてるのに。
だったら私にちょうだい。


母は朝4時台に起きて配達の仕事、昼も夜も別の仕事をかけもちして働いてくれた時期が長くあった。

家事もきちんとしてくれるので、子どもの私は何も困ることはなかった、と思う。

父も働きづめだったのを覚えている。


その家計で、数年のローンで買ってくれた着物。

大島紬というもので、黒っぽくて銀糸が混ざったとても渋い着物。200万円くらいしたと聞いた気がする。

紬だから正装としては着られないけれど、とてもおしゃれないい物だと。


私は友だちに、私の趣味ではないこと、もし買ってくれるなら安くていいから普通の綺麗な色の物がよかったこと、などを話したと思う。

中学時代からずっと好きで信頼していた友だちにわかってもらえないことはショックだった。


私は成人式には出ていない。

振り袖を持っていても出席しなかったんじゃないかとは思う。

母は、振り袖って、2、3回しか着られへんのよ、Mちゃん(私)ほしい?と聞いてくれた。

私は、いらない、と答えた。


一生懸命働いてくれている母のことをわるく言ってはいけない
思ってもいけない。

40才を過ぎて、おそらく初めて、人に母に対する不満を話したのだと思う。

わかってもらえない寂しさのあとに、やっぱり私の方が間違っているのかな、という思いが大きくなっていった。