タオルと下着以外はアイロン
突然の父との別れから12日。
おそらく50年以上抱き続けてきた父への思慕、20数年は思うように会えてもいなかった、その後悔の年月をこれから埋めていくはずだった。
明日からはいよいよ動かないといけない。
気持ちを抑えるのは得意なはずだから、明朝、家を出ればきっと大丈夫なのだろう。
母は、睡眠時間が3時間になっても家事を完璧にする人だった。
今も元気なので頑張ってこなしていると思う。
家の中はいつも片付いていて、きれいに掃除されていた。
タオルと下着以外は全てアイロンがけされていた。
綿のシーツも子どもだった私のワンピースも、家族の衣類は何もかも。
その記憶があったからだと思う、私はとてもしんどかった時期にも、何年も夫のワイシャツをクリーニングに出せなかった。
ワイシャツくらい自分で洗ってアイロンかければいいのに、とお店の人にも思われるんじゃないかと、それほど罪悪感があった。
やっとお店に持って行き、テキパキした明るい店員さんの前に出せた時、心配していたことは何も起こらず、もっと前から出せばよかったと気が抜けた。
キャンペーン中なら1枚80円になるくらいで、そんなに高くもなかったのに。
就活中の次男にこれ以上気を遣わせないように、何枚かたまっているハンカチのアイロンがけでもしようかなと思う。
次男は気持ちを上げるためか、夫を誘って走りに行った。