No.40 本当は怖いことばかり
ちょうど3年くらい前、リフォームを進めている最中に、甲状腺がんが見つかった。
住みながら壁紙を替えてもらったので大変だったし、マンションの大規模補修も重なって、ベランダの外側の足場に人がいて気を遣ったりもしたけれど、外も中もきれいになるのは楽しみだった。
健診で異常となっても精密検査ではだいたい大丈夫になる、と軽い気持ちでいた。
頚に太い針を刺して細胞を取る痛い検査を、うまく取れなかったからとのことで2回受け、結果を聞きに行くと、悪性ですね、(2回目)やってよかった、早いうちに手術しましょう、と言われた。
その結果を待っていた夫は、私が悪性だったことを話すと、「大丈夫やんな?」と心配そうに聞いた。
うん、と答えたけれど、この夫の反応は、その後何度も私をやりきれない気持ちにさせる。
「大丈夫やからな」と言ってほしかった。
怖くてたまらなかったのに。
優しい夫だが、時々、そうじゃない、と腹が立つのはこういうとこなんだ、と自分で整理した。
私は夫の母じゃない。
育ちの成り行きで、人を頼らず何でも自分で決めるし、甘えもしないし、弱さなんて見せないけれど、本当は頼りたい、守られたい。本当は怖いことばかり。
そのくらいもう、わかれよ。
子ども時代を子どもらしく過ごせた人なら、順調にたくましい大人になれよ。
諦めながらも、そう思う。