2台前の車を見て運転
実家に着くと、驚くほどたくさんのカサブランカがあった。
今日は父の四十九日の法事。
こんなこと何になるの、とずっと思いながらお経を聞いていた。
ほら、もういないんだよ。
今日で完全に行ってしまうんだよ。
わかった?
そうか。
こういう場がなければ、私の中ではいつまでも側に父がいる。
いないはずがない。
まだ夢が覚めないだけ。
6週間ぶりに父の道具部屋に入って、父の寝ていた部屋に入って、父がテレビを観ていた椅子に座って、あーほんとにいないな、と思った。
これを繰り返さないと私の頭はわからないんだな。
父との思い出を語る人は誰もいなかった。
帰り道、夫が車を運転していたけれど、途中、急ブレーキで止まった。
前の車が急に止まった、2台前の車は見てなったけど、と夫が言った。
私18才で免許取った時から、おじいちゃんに、車運転する時は2台前の車見とかんとあかんで、って言われてずっとそうしてるよ、と、言わずにはいられなかった。
父は、17才からトラックの運転手の助手をして、その後もずっと運転のプロだった。
本当にかっこいい人だった。