ベランダで明かりつけろ
この間、職場で、あー蜂がいる、と怖がった人がいて、男性が殺虫スプレーを手に、たかだか1、2㎝の小さな生き物を追いかけ回した。
普段は静かな私が、窓開けたらいいんじゃないですか、と大きな声を出して、少し開いていた窓に駆け寄った。
同調してくれる人もいなくてモタモタ。
ブラインドを持ち上げてみてもうまくいかず、とうとう助けてあげることができなかった。
その後で、ブラインド上げたらよかったんじゃないですか、と一人が言った。
ほんとに。
紐を引いてブラインドを上げればよかった。
こういう時、いつも焦ってうまくいかない自分。
でも、もっと早くそう言ってくれるか、急いでそうしてくれたらよかったのに。
かわいそう。
以前なら飲み込んだ言葉も出る。
やっつけた人たちは、当たり前のことをして何か言われてるのが不思議、なようだった。
偶然その日の夜、次男がリビングで、うぁ、何か飛んできた、と叫んだ。
夫が、背中に入ったで、と嘘を言う。
あ、トンボや。
ベランダの戸開けろ。
部屋の電気消せ。
あ、奥の方行った。
ベランダでなんか明かりつけろ。
次男が次々言っても誰もさっさとしない。
次男がベランダに出て、スマホのライトを点ける。
出て行ったわ。
よかったー。
次男が嬉しそうに言うと、何もしなかった家族もホッとした。