長袖の少女
思えば真夏でもずっと長袖を羽織っている。
夏らしい服装の人を毎日目にしながら、あまり自分のことには置き換えなかった。
涼しそうだなぁ。
この間、素敵な半袖のワンピースを着た友人に会った帰り道、雨上がりであまりに蒸し暑かったので上着を脱いだ。
涼しいなぁ。
どうして暑さを少しは感じながらも、いつも長袖を着ているのだろう。
子どもの部活を応援しに行く時に日焼け防止に着ていたけれど、あれからもう何年も経っている。
今朝、電車で向かいに座っている高校生をふと見ると、制服の上に分厚そうなカーディガン、そしてハイソックス。
何かに隠れていたら少しは安心できるの?
一瞬、誰かを捜しているような様子。
元気がなさそうに見えた。
大丈夫だよ、と心の中で話しかける。
白地に大きなヒマワリの柄のワンピースが似合いそう。
それか、空色のノースリーブに首もとが白のパイピング。
うん。髪はあのポニーテールのままで。
不安なら長袖を羽織ったらいいよ。
楽しい夏休みになるといいね、と少女の顔を思い出そうとしたけれど、疲れた頭では思い出せなかった。
また会えるといいな。