駅ピアノを観てまたピアノを弾きたくなった
中学校の途中くらいまでピアノを習っていた。
家はあまり裕福ではなかったと思うけれど、新しいピアノを買ってくれて習わせてくれた。
なのに私は練習を熱心にしなかったと思う。
先生はとても素敵だった。
いつも足元はスリッパしか見えないロング丈のスカート、寒い季節には肩にお洒落なショール。
飼っている黒い猫を抱いた先生に、いらっしゃい、と出迎えられることもあった。
玄関は入ってもレッスンの部屋に入るのはためらわれるほど、中から先生の素晴らしい真剣なピアノが聞こえてくる日も。
私は時々、全然練習をしていなくて、先生に注意をされて、そして言われた。
私は、あなたではなくて、あなたのピアノの音に怒ってるんです。
間違えた音を耳に聴かせないように、間違えたタッチを手に覚えさせないように。
だから、ゆっくり丁寧に細かに練習を。
基本を大切に。姿勢を正しく。
サボることも多かったけれど、先生との時間のことは忘れられない。
その後も、少しピアノが弾けることで、音楽に親しめたし、結果的に今の仕事に近づくきっかけともなった。
今朝、駅ピアノ、という番組を観ながら、また弾きたいな、と思った。
実家の、大工道具がたくさんある父の部屋に、ピアノはある。
習わせてくれた両親への感謝も込めて、いつかまた弾きたい。
大丈夫。
ゆっくり丁寧に細かに。基本を大切に。
先生から教わった練習の仕方は覚えている。