生きているだけでいい。   大丈夫。

大好きだった父との時間をこれからもっと取り戻すはずだったのに、突然訪れた別れ。いつか、私の人生もなんとかなったよ、と空に向かって乾杯したい。その日まで続けたいブログです。

No.190 ホームに蝉が

f:id:kannpai:20200825183257j:plain昨日、出張のために駅に行き、ホームのベンチに座った直後のこと。


電車が来るまで5分くらいあるかな。よかった。間に合う。


隣には小さな女の子とお母さんらしい人が座っている。


その二人と私の間に、 ICOCAの入っているのが見える定期入れが。


確かめると、その人のものではないとのこと。


この時間帯、御用の方はインターホンで、の駅なので、早く出て来て、と焦りながら用件を言った。


精算機の横に乗車券回収ボックスがあるのでそこに入れて下さい。


ここかな、と移動すると、はい、そこに入れて下さい、と今度はその辺りから声がする。


どこから見られているんだろう。

まぁいいか。
急いでるからよかった。


ホッとしてベンチに戻ろうとすると、今度はホームの端に仰向けの蝉が。


動いてるのが見えてしまった。


え?また私?
もう許してほしい。


通勤時間帯じゃないのに人が多い。
向かいのホームにもたくさんの人。


注目浴びるだろうな。

変な人だと思われるだろうな。


蝉を拾い上げる勇気が出ない。

でも間違いなく、電車が来たら誰かに踏まれてしまう。


うまくつかめるかな。


物だったら、どんなに上等そうな物でも勇気が出なかったと思う。


でも、生きてるから、出た。


自動改札は同じ駅での出入りをさせてくれないので、また例のインターホンに向かって大声で話す。


もういつものおとなしい自分じゃない。
言葉を選んでいる時間もない。


蝉を逃がすのでちょっと外に出たいんです。


なぜかそれ以上聞かれず自動改札が開いたので、近くの植え込みに蝉を置く。

ごめんね。こんな所で。


乗り遅れるかな、と思うのと同時にインターホンに叫んでいた。


蝉を逃がして来たので入りたいんです。


別の人の声で、何か話されてたんですね、とスンナリ開けてもらえて、電車に間に合った。


もっと説明させられてもおかしくなかったのに。

蝉も私もなんとか助かってよかった。


確かにこの夏、いっぱい声を聴かせてもらって力をもらえたから、恩返ししたいけれど。

でも、これからは、もっと余裕で助けてあげられる人の近くを選んでくれたらいいのにな。