心配せんでいいよ
以前は死ぬということがとても怖かったけれど、今はほとんど怖くない気がする。
一番身近な大好きな人がゆっくりと旅立っていく時間を、ずっと一緒に過ごしたから。
実際今も、父がいる所との境い目がない。
50年前から言いたかったのに言ってなかった言葉を、50年分話しかけたと思う。
お父さん、ずっと、かっこいいと思ってるよ。
お父さん、いつもありがとう。
お父さん、大好きよ。
母や弟や他にたくさんの人がいても、絶対今言わないといけないと思って、何度も何度も耳元で話し掛けた。
父は目を開けることもできなかったけれど、いつものように優しく微笑んでくれた。
最後の言葉は私に対してではないと思う。
「心配せんでいいよ」だった。
これ以上思い出すのは、やはり無理だと思う。