どんな面接だったの
春から完全に母親を放棄している。
ワイシャツのクリーニングも、紺色のスーツについた犬猫の白い毛を取るのも、何も手伝えていなかった。
2ヶ月くらい前だと思う。
就活中の次男は、面接で、軸がぶれているのでは? なぜうちなの? と厳しい質問を浴び続けていたのだろう。
いくつも落ちて心が折れかけていたのだと、ようやく私は知った。
その日も他のことに気を使わずにweb面接を受けたかったと思う。
でも、狭い我が家のリビングに家族がいた。
次男の部屋はリビングの隣。
きっと遠慮がちに、面接が終わるまで別の所にいてほしい、と頼んだだろう。
仕事から帰ってしばらくして次男の顔を見た時、ダメだったんだなとわかった。
溜め息をついたり、いつもは言わないのに、誰かが開けたままにする部屋のドアを、閉めて、と言ったり。
でも、機嫌わるくしないように、と懸命に頑張っているようだった。
夕飯を食べに来て、ポツポツと喋り始めた。
何社も落ちて、しんどい、と。
するとその直後、スマホの着信に気づいて、私が横を向いていたほんの数秒の間に、涙をこぼしていたのでびっくりした。
昨日受けた会社の面接が受かった連絡があった。
張りつめていた緊張の糸が切れたみたいで、ほんま、しんどい、と泣き声に。
それから、今日の面接は一人やったら死んでた、と。
こんな家族でもいれば気が紛れるのか。
それにしても、死んでた、なんて言葉が出る面接ってどんな面接だったのだろう。
相手は、「大人」だったのだろうか。
次男は夢をなくさずに、まだ頑張っている。
偉いな。
母は何も頑張らないのに。
ほんとに偉いなと思う。