職場で早い目のお昼を取り、外勤に出ようとしていると、いつも一緒に食べる人がやって来た。
今日もこの人としゃべって午後からの仕事のためにエネルギーを補充したいのに。
覗いたことはないけれど、いつもお弁当前に、ちょっと世話しとかなあかんねん、と何かスマホのゲーム。
そして食べたあとは、阿弥陀如来像とかどこかのお寺の話を次々にしてくれる。
話題を探さなくてもいいので助かるし、何より話が面白い。
周りに気配りもしながら、自分の思いも気楽に出して自然体なので、きっと誰もが話しやすいんだろうな。
私より少し年下位だと思うので、メルヘンチックすぎるかな、とも見える服装だけど、似合っているので、いつも褒めてしまう。
じゃあ行って来ます。
続けて小さな声で言ってしまった。
行きたくない。行きたくない。行きたくない。
半年前の私なら絶対に言えなかった。
私が少し変わったから?
その人が言わせてくれてる?
にっこり笑って、やっぱり返してくれた。
もめたくない、もめたくない、みたいやね。和牛の。
私はもちろん知らなかった。
和牛という人の漫才のセリフらしい。
なんだか私はとても損をしている気がする。