黄色い旗を高く
私が幼稚園に行っていた頃の、伯父(母の兄)と伯父のお嫁さんと母と私と弟とで、夜、横断歩道を渡る光景、を覚えている。
伯父は目が不自由で、私が手をつないでいた。
私のもう一方の手は母とつながれていたらしい。
そこに、無免許、未成年の運転する車が信号無視で突っ込んだ。
とっさに母は私の手を後ろに引いたけれど、その力は、私の反対側の手までは伝わらなかったと思う。
母が大声で、誰か!と叫んでいた。
誰かが伯父をおぶって近くの病院に運んでくれた。
病院で待っている間、弟が泣くので、泣いたらだめ、と言っていた私だけれど、自分が黄色い旗を高く揚げなかったからじゃないか、と思っていた。
どっちの手に持っていたのだろう。
まだ5才位だったのに、そのことを謝らないといけない、と確かに思っていた。
伯父は33才の若さで亡くなってしまった。
もっと小さかった時の私と、まだ見えていた優しい表情の伯父が、かっこいい車と一緒に写っている写真があったと思う。
どんな会話があったのかは誰にもわからない。